最近熱海が良いらしい
突然だが、会社の後輩の話によると熱海が良いらしい。
聞けば、都心から距離も近く行きやすい上にオシャレなカフェや若者向けのコンテンツが続々と立ち上がっているとのこと。
都心から近いのはその通りと思う一方、熱海と言えば、尾崎紅葉の金色夜叉の舞台だが、湯煙上がる温泉街のイメージであり、過去何回か訪問した際にも街の雰囲気としてはどちらかというと古く寂れたといった印象であったので、若い子の感覚で「良い」というのは正直驚きであった。
これは実地検証しに行かなければいけないということになり、早速週末に車を走らせた次第である。
海沿い南に延びる真鶴道路は快晴とはいかなかったが、秋らしいまったりとした天気の中有難いことにそれほど混んでおらず快適なドライブが楽しめた(この辺りは一車線道路が多く、簡単に大渋滞になる!)。
最後に行ったのは2019年とかなので3年ぶりの熱海である。
神社×カフェの美しい調和、来宮神社
旅には新しい出会いを期待する。何度も来た熱海ではあるが、今回は新しい一面を見れる可能性があるとのことでとてもワクワクしている。
熱海は気軽に来やすいこともあって、いつもは適当に温泉に浸かって、これまた適当に海辺を散策しながら終えるという随分雑な旅のプランを立てていたが、今回は熱海の良さを再発見しようということでいろいろ真面目に調べてみたところ訪れるべきスポットNo.1に来宮神社があった。
今まで恥ずかしいことに完全スルーしていたスポットだ。
あったんだ、こんなところ。
自分は行ったつもりでも実際にはちゃんとその街を見れていないものである。
新しい場所を目指すのも旅、何度も行ったところで新発見をするのも旅だ。
木漏れ日から見上げる来宮神社の木々は神々しくも美しい。
もう秋だが、未だ青々と生命力を維持している。
時折風に吹かれて鳴くカサカサとした音の中に神様を感じるものである。
そこらに生える植物も型にハマらないのびのびとした美しさがある。
自然は本来そこに在るだけで美しい。
これは自然と調和を目指す非常にアジアらしい考え方で、とても好きな自然の認識の仕方だ。
來宮神社は、古くから来宮大明神と称し、熱海郷の地主の神であって来宮の地に鎮座し、来福・縁起の神として古くから信仰されています。
来宮神社ホームページ
熱海駅からでも徒歩20分ほどで着くが、JR来宮駅が最寄り駅。
鳥居前で軽く一礼。
参道の中央は神様の通り道なので、端を歩く。
来宮神社は熱海地元の神様で、平安初期の征夷大将軍坂上田村麻呂公は戦の勝利を神前で祈願し、各地に御分霊を祀ったとも伝えられる。
現在では全国四十四社のキノミヤジンジャの総社として、信仰を集めているとのこと。
鳥居をくぐり、5mほどで左手に「手水舎」。
木々に囲まれ、清々しくも静かに佇む本殿。
本殿で手を合わせ心を整えた後は左の竹林を通り国指定天然記念物の大楠を目指す。
来宮神社のご神木「大楠」は樹齢2千年を超え、平成4年度の環境省の調査で、全国2位の巨樹の認定を受けているとのこと。幹周り約24m、高さ26mの大迫力である。
今から2000年前というと22年だが、倭の奴国王が後漢に使者を送っていたのが57年で、邪馬台国の卑弥呼が魏に使者を送っていたのが239年だ。
それよりも前にこの大楠は生まれ悠久の時を刻んでいることになる。
それはあまりにも偉大であり、自然と手を合わせたくなる。
きっと我々が全て塵になった後もこの大楠は時を刻み続けるのだろう。
大楠で圧倒的な自然の力強さを感じた後は、階段伝いに下り、茶寮「報鼓」で一息。
来宮神社は境内が綺麗で美しい調和が取れているのに加え、大楠等のここでしか会えない自然がある。
更にもう一つ特筆すべきはカフェがめちゃくちゃオシャレだということだ。
なるほど後輩の言うことにも一理ある。確かにこれは映えるスポットだ。
店内は今風のシンプルながら洗練されたインテリア。
売られている物も神社の中にあるとは思えないオシャレさ。
「来」の文字がプリントされた麦こがし饅頭はコロコロしていて可愛い。
マラサダドーナツって何?と思ったが、調べるともともとポルトガルの伝統的なお菓子だったが、移民よりハワイに伝わったハワイの定番スイーツらしい。
マラサダとドーナツは食感が違?
マラサダとドーナツはその見ためもよく似ている。もともとマラサダはポルトガルの伝統的なお菓子だったが、ポルトガルからの移民によってハワイに伝わり、現在ではハワイの定番スイーツになったといわれている。そんなマラサダは外はカリっとしており、中はふんわりとした食感が特徴だ。ドーナツと比べると生地がとても軽いのがわかる。その生地の軽さは、生地を発酵させてから作るからだ。発酵をしっかりとした生地は空気を含み、よりふんわりとした食感になるのだ。マラサダに比べるとドーナツは発酵させても時間は短かったり、発酵させない作り方もあるので、生地がしっかりとしている印象があるのだ。
ウェブサイト オリーブオイルをひとまわし
気になるアイテムが多いが、秋と言えば栗!ということで麦こがしモンブランを頂く。
山屋的にモンブランと言えば、ヨーロッパアルプス最高峰、フランスとイタリアの国境線に位置するLa Dame Blanche、「白い貴婦人」こと標高4808mのモンブラン山をイメージするが、かのお山は勿論雪山なので真っ白。
なぜ、栗色のこのスイーツがモンブランとなったかはよく分からない。
しかし、美味しければ全て良し。深い詮索は無粋。
飲み物はホワイトモカをチョイス。
ハート形の最中が可愛い。
ケーキ+飲み物でもクリームと若干カロリーオーバーな気もするが、今は食欲の秋、深い詮索は無粋。
ハート最中の中にはなんと更に小さいハートのラムネが!
芸が細かい。
ちなみに、神社の建物でも時々目にするこのハート、どうやらもう一つちゃんとした意味があるようで、猪目(いのめ)と言い日本古来の文様であり、魔除けや福を招く護符的な意味合いがあるとのこと。
帰りしな、鳥居付近の第二大楠もお参り。
こちらも樹齢1300年以上で、300年前の落雷にも負けず生き続けているとのこと。圧巻の生命力。
落雷の傷跡か大きく裂けているものの、それでも生き続ける力強さを感じる御神木。
人生とは不屈の闘志と見つけたり。
平和通商店街散策
来宮神社を後にして時刻は15時を回ったが、その足で駅前商店街を散策してみることにした。
ここはJR東海道線熱海駅を出てすぐにある商店街で地元の名産やお土産なんかが買える。
以前訪れた際にはシャッターも多く、どちらかというと古く、廃れている印象だったが、新しいお店も続々オープンしていて息を吹き返しており驚いた。
出口から駅に向かって逆行したが、まず目についたのはおさしみ食べ放題と嘯く「おさかなパラダイス」。
おさしみ食べ放題とはなんとも甘美な響きではないか。
しかし、当然の如く人気店のようでこの日も15時の時点ですでに席予約は終了していた。
商店街の中でのいろいろ気になったお店についても紹介していきたい。
海辺で海産物に恵まれる熱海の特産と言えば干物。
商店街の中へと歩みを進め出会った「魚とや」。
定番のアジをはじめ、季節限定のキンメダイ、アユ、キスなどの干物も充実している店だ。小田原や沼津の市場から仕入れた新鮮な魚をその日のうちに加工・天日干しをするのがおいしさの秘密とのこと。
普段干物はあまり食べないが、干された海産を見るとどこか懐かしい情緒を感じ、古き良き日本に一瞬タイムスリップしたような感覚になる。
温泉饅頭を売る「阿部商店」。
昭和35年開業の老舗であり、自慢の「いいらまんじゅう」は通常の温泉饅頭より少し大きめであり、黒糖の香りが漂う逸品。第18回全国菓子博覧会にて全菓博大賞を受賞したとのこと。
黒糖以外にも抹茶や紫蘇味の饅頭もあり、手軽にいろいろ試したい。
蒸したての温泉饅頭は見た目も可愛く実に美味しそう。
店先で蒸しているのは狡さすら感じる。これには思わず足が止まる。
磯揚げの「まる天熱海店」。
熱海の地元のお店ではないが、最初に食べた時からファンになってしまい、旅先で見つけては必ず買うようにしている。
以前は見なかった若者向けのお店もいくつか見かけた。フルーツサンドを売る「熱海フルーツキング」。
ティファニーブルーの実に映えるお店のショーケースには様々な果物にフルーツサンドやフルーツゼリーが並ぶ。メインの商品にフルーツサンドを選んでいるあたりもどこか昔の喫茶店のようで独特のエモさを感じさせる。
創業明治四年の味を継ぐ「又一庵熱海ばたーあん」。
又一庵の餡とバターが織りなす和洋折衷の味。あんこがぎっしり入った「熱海ばたーあんパン」が人気のようでとても気になったが、めちゃくちゃ並んでいて泣く泣く今回は放棄。次回は是非チャレンジしてみたい。
熱海ばたーあんパン以外にもシャインマスカットモンブランやフルーツ最中等意欲的な作品が数々あり、次回はしっかりと時間を取って楽しんでみたい。
平和通商店街を駅側に抜けると目の前には駅ビルのLUSCA。
ここでもお土産が揃うほか、一通りのレストランや、薬局が入居している。
旅先で体が不調になってもコンビニしか見つからないこともしばしばなので、熱海で困ったらLASCAにいこう。
LASCAは屋上にも出ることが出来、上から駅のロータリーと商店街を見下ろすことが出来る。
駅側から見た平和通商店街。
平和通商店街の雰囲気。程よい人出でゆったりと回れた。
一方、お店のほとんどは18時閉店と早いので時間に余裕を持たないと確り回る前に商店街が閉まってしまうので注意が必要。
フラっと立ち寄ったお店でみかんサイダーを飲みながら商店街を後にする。
熱海の陽が落ちていく。
今回の旅は新しい発見がたくさんあり、楽しい、今まで知らなかった熱海は予想を超え進化していた。
まだ、旅程は半分、後半編に続く。