ふとした大阪の夕方、中之島ビル街の灯りを眺めながら夜の予定を思案する。
キタの洗練も素晴らしいがこの街にはもっとこの独特な文化を身近に感じれる場所がある。
端的に私はミナミが好きだ。
あらゆる可能性を秘めたかのような猥雑さが好きだ。
次の瞬間何が起こるか分からない危なっかしさが好きだ。
油断した瞬間、ふいに訪れる奇跡が好きだ。
無性にミナミで串カツが食べたくなった。
この文章は地下鉄御堂筋線で心斎橋に降り、法善寺の串カツを目指すというただただありきたりな大阪プチ漫遊記である。
クオリティーは全く担保しないので、暇を持て余し、ミナミの何気ない一晩の風景を漫然と眺めたい読者のみお付き合い願う。
大丸直結の心斎橋6番出口から出発。
目の前には心斎橋筋商店街が広がる。老舗高級ブランドから新進気鋭の個性店舗までごちゃまぜにしたとても大阪らしさを感じれる場所だ。
活気があり、何か新しい発見が出来るんじゃないかとワクワクさせられる。
未知とは少しドキドキしながら楽しいものだ。
心斎橋筋をまっすぐに南下すると説明不要の戎橋に出る。別称「ひっかけ橋」、旧来よりのナンパスポットだったらしい。
戎橋はそのまま南下すれば千日前、難波、更にはオタクの聖地日本橋に至り、大阪版歌舞伎町の宗右衛門町や道頓堀にも至れるミナミのヘソみたいな場所だ。
キャッチのお兄さん、お姉さん、ストリートアーティスト、観光客、様々な人間模様が交錯する。
阪神タイガース優勝の際にはここから下の道頓堀川に向けてダイブが発生するとかしないとか。
アイコニックに光るグリコの看板もここ戎橋にある。
2014年にLED化された。
今日のお目当ては串カツだが、どこに行こうか。
本気のローカルを目指すなら新世界方面を目指すことになるが、ここからの歩きはかなり遠い。
また、新世界の店は値段は安いが当たりはずれが大きい。
チェーン系だと、やはり「だるま」だろうか。しかし、かの店はどこも大盛況。予約なしだと待たされる。
しかし、大丈夫、今日は秘密の場所がある。
戎橋を越え、道頓堀に入る。
道頓堀から人一人がようやく通れる法善寺横丁に体をねじ込む。
まるで秘密の裏世界への入り口のようでワクワクドキドキさせられる。
ここは道頓堀の喧騒から一気に雰囲気が変わり、静かに流れる在りし日の風情を感じることが出来る超おススメスポットだ。
老舗バー「洋酒の店/路」
関西財界人も集まるオーセンティックバー。
クオリティーは間違いないが、財布にもオーセンティックな一撃を加える。
寄りたい気持ちもあるが、今回は串カツ目当てなのでスルー。
今日の目的地に到着した。だるま/法善寺店である。
正直ここはあまり大声で宣伝したくない場所だ。
串かつだるまは大阪で串カツ屋を10軒以上回った身としてはもっとも値段とクオリティーのバランスが取れている店だと感じている。迷った時はここで間違いない。外れはない。
一方そんな良いお店だからこそ大概どこも混んでいるのだ。
事実この日もすぐ横の道頓堀店、なんば店は長蛇の列が出来ていた。
良い店だが、基本予約必須、飛び込みは待ち、そんなお店である。
しかし、この法善寺店は場所が若干発見しずらいところにあるのか、飛び込みでもすんなり入れたりする。
この日も有難いことに待ち時間なしで入れた。素晴らしい。
なので私としては下手に紹介して混み始めると大変難儀なので秘密にしておきたい場所なのだが、こんな無名ブログのしょうもない散歩記事を読む好事家は少数なので問題ないだろう。
一先ずメガハイボールで乾杯。串カツにはハイボール。これ以上ない最強の組み合わせである。
ステンレスボウルにシャキシャキのキャベツが出てくる。おかわり自由。
これをソースにつけて食べるが、美味い。これだけで行ける。
串カツは揚げ物なのでしつこさがあるが、キャベツと一緒に食べることで良い塩梅になるのだ。
揚げ物を食べているのに、キャベツを挟むことでヘルシーであると自分を騙すこともできる。
そう、串カツはヘルシーな食べ物なのである。知らんけど。
だるまと言えば「二度漬け禁止やで!」の看板がおなじみだが、なんと、個別にソースを皿に出す方式に変更されていた。
だるまよ、アイデンティティはどうした!と詰問したいところであるが、昨今のコロナの感染対策的な意味合いもあるのだろう。
うん、そこはアイデンティティを曲げていい。どんどん曲げよう。楽しみもワクワクも命あってのことだ。
安全第一。
カウンター越しに並ぶ食材が欲を誘う。どれも注文したくなるものばかりだ。
「皇帝のえび」とはこれ如何に。1500円、めちゃくちゃ高い。こういうクスっと笑えるネタを入れてくるのもとても大阪らしい。
串カツをどんどん食べていくのかと思いきや最初は当然のようにどて焼き。
だるまのどて焼きは感動するほどに美味しい。一番最初に食べた時はあまりもの美味さに3つ注文したほど。
一方、串カツ屋で最もクオリティーの差が出るのもこのどて焼きだと思っている。
だるまのどて焼きやあまりにも美味かったので、過去もっと美味いどて焼きを探し出してやろうと新世界に赴いたのだが、肉は硬いわ臭いわで大変な思いをした。以降、どて焼きはだるま一択である。
むしろどて焼きが食べたくてだるまに行っているまである。
串カツも当然美味い。
油がきれいなので思うほどのしつこさはない。
言葉は不要、ハイボールと共に幸せに身を浸そう。
食後に夫婦善哉横の不動明王に水かけ。
手を合わせれば、雑念が整理され清らかな気持ちになる。
良い一晩であった。一人でフラっと食べにいく串カツもまた悪くない。
本日の探索を終了する。ほな、また。