キアオラの気紛れ
Part-4から続きます!
思い出の旅にトラブルは付き物。
記録的な豪雨でミルフォードトラックがキャンセルになった翌日、昨日の雨が嘘のような快晴となりました!
1日ズレてたら!と思わないこともないですが、これが大自然の愛すべき気紛れです。
ニュージーランドは主要幹線道路も基本、片道1車線で、1番近いスーパーまで50kmだったりしますが、先に自然があって、人間がその中で生活しているという当たり前のことを教えてくれます。
取り敢えずこの晴天に感謝して、大の字!
ヴィクトリア女王の街
折角晴れたので昨日出来なかったクイーンズタウン市内散策をしてみます。
その美しさはヴィクトリア女王にこそ相応しいと評され、付いたクイーンズタウンの名前の通り、山あり、水ありの優雅な港町です。
ビーチストリートに立ち並ぶオシャレなレストラン群。どこかスイスのような雰囲気。
自分はより簡易で素朴な雰囲気のクライストチャーチや、そこから広がる大自然の方を好みますが、集中的に南島を観光するならコンパクトに纏まっているクイーンズタウンが良いと思います。
今回は時間の都合上スルーしてますが、楽しげなアクティビティも多く用意されている様でした。
個人的には一人乗り用のボートに乗り込み、サメになり切るハイドロアタックというアトラクションが楽しげで次回チャレンジしてみたいと思いました。
左に見えるのが蒸気船、「湖上の貴婦人」ことTSSアーンスロー号である。今時珍しい石炭船。
アウトドアに疎い人でも、蒸気船で湖内を一周するだけでも十分楽しめそうですね。
ニュージーランドで3つ目に大きい湖、ワカティプ湖に抱かれるクイーンズタウン。
美しい街並みにウミネコもこのドヤ顔。
一路北へ
午前中の優しい日差しの中、満足度の高いクイーンズタウン散策を終え、一路北上!
アオラキ/マウント・クック国立公園まで250km!
ミルフォードトラックは残念でしたが、山屋の本領発揮でニュージーランド最高峰の考察を4日間かけて行って行きたいと思います。
雨の中のドライブも情緒的でいいなと思ってましたが、やっぱり晴れの日のドライブが最高ですね!
昨日の雨の影響か、いつも以上に草が青々としているように思えます。
どんな風景を切り取っても美しいニュージーランドはやはり最高の旅先だと思います。
New Zealand Alpine Lavender
テカポ湖に通じる8号線を途中から80号線に曲がり、そのまま進めばクック山へ辿り着けます。
ターゴイズブルーに輝くプカキ湖を右手に走ると、左手にラベンダーの良い香りが!
一面広がるNew Zealand Alpine Lavender です。
天気にも恵まれて、青空と山あいのゴールドとラベンダーの紫が絶妙なコントラストです。
畑の途中には絶妙な位置に椅子が配置されており、気分はまるでラベンダー畑の地主!
この草ドラムに登るのも密かな憧れだったので嬉しかったです!
まるでラベンダーの海に埋もれているよう。最高に気持ちいいです!
ただ、日差しは強いので日焼け止めは確り塗りましょう。
このラベンダー畑、入場料が一人5NZDですが、ハッキリ言ってコスパ高いです。
インスタ映え間違いなしの写真が撮れますし、普通にラベンダーに囲まれてリラックスするも良しです。畑も広大で2時間くらいは余裕で過ごせそうでした。
もう少しラベンダーと戯れたい気持ちもありますが、本日のメインは飽くまでクック山!
名残惜しいですが、引き続き一路北へ!
ニュージーランド最高峰!攻略開始、クック山!
15:30目的地到着!ラベンダー畑が楽しすぎて大分道草しましたが、なんとか本丸のクック山麓に到着しました。
さて、このニュージーランド最高峰をどうやって攻略してくれようか。
復習すると、クック山とは3724m、富士山よりちょっと低いニュージーランド最高峰。
しかし、タスマン氷河、フッカー氷河を筆頭に多数の氷河を有するこの山の難易度は富士山の遥か遥か上です。
個人的な山屋としての目標は非常に明確で2024年のエベレスト登頂ですが、クック山は高度こそ低いものの、技術難易度はエベレストの上。難易度はSS級です!四姑娘山ピーク4(難易度SSS+級)と並んでエベレスト登頂後に挑みたい裏ボス的な位置づけです。
そもそも氷河がある時点、アイスクライミング 必須で、クレバス、雪崩のオンパレードで登山初心者は絶対にトレッキングルートを外れてはいけません。
2020年2月時点で既に138人の腕に覚えのある登山家を喰らった魔の山でもあります。
思えばこのニュージーランドの旅を発案した去年の夏、このクック山を登るべく現地ガイドに同行をお願いしたところ「これまでの登山歴は?」と聞かれ「残雪期の富士山だ!」と答えたところ「トレッキングルートから修行し直してこい(苦笑)」と鼻で笑われた苦い経験があります。
ガイドとしてもど素人を危険な山に連れ込んで事故を起こす訳にはいかないので非常に賢明な判断であったと思います。
しかし、今や玉珠峰1号氷河での厳しい修行を経て、氷河歩行技術を身に付け、アイスクライミング の技術も磨きが掛かっているので去年の夏より山屋としては格段に進化しています。
クック山はヤバイ山なだけにじっくり挑む必要がありますが、今回は登頂は目指さず、頂上までのルート理解と山域理解に時間を使うことにします。
タスマン氷河ルートの考察
今回のクック山考察には4日使う予定ですが、先ずは歩いてみよう!ということで数あるトレッキングルートの中、クック山の東壁の状況を伺うべく、タスマン氷河(ボールハット)ルートに挑んでみることにします。
難しく考える前に先ずは行動です!
タスマン氷河ルートは車で80号線をアオラキ・クック山国立公園に向かう途中、Tasman Glacierの標識を右に曲がることでアクセスします。
スタート地点はブルーレイク駐車場(Blue Lake Carpark)から。
駐車場にトイレがあるので登山前に済ませておきましょう。
ニュージーランドの公衆トイレはどこも非常に清潔なので日本人でも戸惑うことなく使えそうです。
トレッキングルートは標識が分かりやすく、道も綺麗に整備されてるので迷うことはあまりないと思います。
Tasman Lake&Riverまでゆっくり歩いて25分の道のりです。
美しいサザンアルプスの山々を背景にいざ登山開始!
16時前に登山開始など、日本では狂気の沙汰ですが、ここクック山周辺の2月は日没が21時ころなのでまあ大丈夫です(もちろん早出に越したことはありません)。
開始地点の標高は825m。気温は19度でした。
タスマン氷河ルートは観光客を想定したトレッキングルートと思われ、道は非常に整備されており、歩きやすいです。
ここだけならスニーカーで十分歩けるかと思います。所謂登山装備は不要です。
途中、道が←Blue Lakes、→Tasman Glacier Viewで分岐します。
氷河が作り出すブルーレイクを眺めたい方は左に曲がりましょう。右が正規ルートです。
豪雨の影響からブルーレイクは少し濁っていました。通常はもっと綺麗なブルーが望めるようです。
ルートも豪雨の影響でところどころ水没して他ので、雨の後は注意が必要です。
タスマン氷河ルートは片道25分でクック山周辺で最も短いトレッキングルートとなります。
最後のちょっとした階段を登りきってしまえばすぐ終点です。
タスマン氷河ルート終点に到着しました!
ニュージーランド最大である優雅なタスマン氷河全景と左手にクック山東壁と山頂が見えます。
二つの猫耳の左側がLow Peak、右側が頂上のHigh Peakです。
今や3日半の濃密なクック山考察を経て、この山に関しては大分詳しくなりましたが、最初見たときは良く分からなかったです(笑
後のビジターセンターのガイド曰く、東壁直下にグランドプラトーという比較的平らな箇所があり、そこにプラトー小屋という山小屋があり、ここからリンダ氷河を回るのが「最も簡単な」クック山の登頂ルートだそうです。
ガイド登山ではグランドプラトーまではヘリで行くとのことです。これにより最も危険なタスマン氷河をスルーすることが出来ます。
プラトー小屋から山頂まで、天気が良くて登山者の技量もよければ片道10時間、条件が悪ければ18時間とのこと。登山ですね(笑 勿論その間、雪崩、滑落のリスクに晒されながらダブルアックスで登ることになります。
山屋じゃない一般の方だと、氷河は白銀の世界を思い浮かべるかと思いますが、氷河の入り口は大体泥や岩に覆われていて黒いです。
マジか!と思われるかもしれませんが、この黒い砂利の下は高確率で氷で動いているのです。
氷河とは文字通り、氷の川であり、山から万年雪が重さによって氷となり、ゆっくりゆっくり流れ出しているものです。このタスマン氷河は1年間に3m程流れてるとのこと。
なので、我々のようなクック山考察隊やタスマン氷河に心惹かれる方じゃない限りTasman Glacier Viewから見える景色は少し感動に欠けるかもしれません。
雪山ドーン!な景色を見たい方は後述のフッカーバレールートが大変オススメなのでブログ更新をお待ち下さい。
ガレ場の先、ボールハットルート
さて、本来ならば、タスマン氷河ルートはここで終わりですが、クック山に対する調査を更に進めるために氷河によって堆積されたガレ場の先へ進みボールハット(ハット:山小屋)を目指します。
地図を見る限り、ボールハットからその先のボールパス(2200m)に氷河を回避しながらアクセスすることが出来、その後、NAZOMIから頂上を目指せそうだからです。
危険なクック山の中このルートがまともそうなので、このルートで行けるか検証を進めます。
※後述の通り、後にもっと安全な駐車場から伸びるルートがあることが判明したのでボールハットに向かう場合でもそちらのルートを選びましょう。
ガレ場は不安定で大変危険です。日本で言うところの大キレットを余裕で通過できる技量を身につけてから挑みましょう。
また、サザンアルプスの常として時たま強烈な突風が吹き荒れるので十分注意が必要です。
ガレ場を抜けると平地に出ますが、今度は雪崩エリア。
今は季節柄、この地点での雪崩の心配は殆どありませんが、時期によっては十分注意が必要です。
この歩いてる場所の下は氷なんですよね、油断は出来ません。
駐車場から2時間ほど歩いて、氷河湖の縁まで来ました。
氷河へのアクセスは通常、こうやってモーレン(氷堆石)を歩くか、氷河湖をボートで行って、その先の氷壁をアイスクライミング するかの2択です。
どちらもメリット、デメリットありますが、氷河湖先の氷河は非常に不安定でクレバス多発エリアでもあるので、自分としてはモーレンが好みです。
地図を見るとおそらくボールハットまで後1時間ほど。
しかし、先日の豪雨の影響で道が派手に崩落していました。高低差30mくらいはあるかと思います。落ちたら即死ですね。
右側に小さい川が流れていますが、下が氷であることの証拠ですね。
今立っているこの縁もいつ崩落するか分からず、全く油断出来ません。
安全に進める道はとりあえず無さそう。
標高1020m、出発から2時間30分。
ここを本日の山頂とする。
目的とするボールハットは1030m地点にあるはずなので、標高差10m。そう遠くない場所まで来てます。
帰りしなに見つけたのですが、危険なガレ場を行かずとも良いルートが駐車場から伸びているので、ボールハットに向かう場合はこの道から向かいましょう。
駐車場まで帰還しました。
ボールハットまでは日本で言うところの一般登山道ですが、冬場は普通に雪崩もあるとのことで警戒が必要です。
また、ボールハットからボールパス(2200m)までは更に難易度が増す魔の道です。心してかかりましょう!
海外あるあるですが、海外は基本的に一般登山道なるものは無く、あったとしても日本で言うところの北アルプスくらいの難易度です。
丸とかバツとか書いてありませんし、遭難リスクは飛躍的に上昇します。
一方で、日本みたいにあれが禁止、それもダメとかとやかく言われることも少なく、最低限のLNT(Leave No Trace)等守っていればあんまり言われない感じです。
究極の自由&自己責任の世界ですね。
なので、自分の技量と山のレベルを確り見極めなければいけません。安全第一で!
自分が日本で調べたところ、トレッキングルート含めた、クック山の攻略は見当たらなくて難儀したのですが、このブログ記事がどこかの名も知らぬ山屋の参考になれば幸いです。
そもそも海外登山は情報少なめですが、ルートや状況の役立つ情報をこれからもこのブログを通じて配信して行きたいと思います。
とりあえず今日は時間ももう19時を過ぎているので一旦帰還します。
Mt Cook Lodge and MotelとThe Chamois Bar
登山から生還した日は今日の命を祝して美味しいものを食べるのが鉄板です。
今回のクック山調査隊のベースキャンプとしてはMt Cook Lodge and Motelを選択しましたが、ホテル内にサザンアルプスが見渡せる素敵なレストラン、The Chamois Barがあります。
大きな窓から山脈を眺めながら食事できます。
ドリンク及び食事のメニューはこんな感じ。
飲み物は地ビールが素敵ですね!
食事はステーキやサーモン等のグリル物とピザが売りみたいです。
注文はバーカウンターで頼むキャッシュオンデリバリースタイル(日本で言うHUB的なスタイル)。
陽気な鹿の兄弟がお出迎えです!
地ビールMAC’S GOLDとCANTERBURY DRAFTで乾杯!
文句なしにうまい!
疲れた日にはやっぱりステーキ!
350グラムのリブアイステーキが34.5NZD(2000円ちょっと?)で激安でした!
肉質が柔らかく思わずニンマリです。
250グラムのサーロインも32.5NZDで超お得!日本でこの値段は先ず無理ですね。お肉も確り美味しい!
ロッジ利用者以外も使えるので、クック山に行く機会がある場合には是非立ち寄りましょう!
お部屋は別荘方式。まるで自分の家のような安心感。
今日から4日間お世話になります。
部屋もとても素敵なマウンテンビューでした。
一泊388NZDは高めですが、確りクック山の調査を行なって元を取りたいと思います。
明日以降はクック山全景が見えると評判のフッカーバレールートを探索していきます。
乞う、ご期待!
Part-6へ続く!!