久々の熱海旅後編:MOA美術館、ACAO FOREST

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内容が思いの他多く、前編(前編へのリンク)、中編(中編へのリンク)、後編と3編にわたり書いてきた熱海旅だが、いよいよクライマックスの後編へ。今回は熱海旅のメインコンテンツとなりうるMOA美術館とアカオハーブ&ローズガーデンについてご紹介させていただく。

両方とも敷地が広く、内容も目白押しである為、一日で回るならこの二か所でもうお腹いっぱい、出来れば二日に分けて回った方がちゃんと回れると感じた。

では早速、MOA美術館から行く!

高台に建つ美の宮殿、MOA美術館

MOA美術館は竣工1981年12月23日、翌1982年1月11日に開館した私立美術館である。

創立者は岡田茂吉氏であり、同氏のコレクションを元に国宝3点、重要文化財67件、重要美術品46件を含む約3500件におよぶ膨大な美術品を貯蔵する巨大美術館である。

旅行先に立ち寄るちょっとした美術館という感じではなく、極めて見ごたえがある確りした美術館との印象だ。

チケットからもう無駄をそぎ落とした美しさを感じる。シンプルイズベスト。この美術館とは気が合いそうだ。

創立者の岡田茂吉は、「優れた美術品には、人々の魂を浄化し、心に安らぎを与え、幸福に誘う力がある」と考え、「美術品は決して独占すべきものではなく、一人でも多くの人に見せ、娯しませ、人間の品性を向上させる事こそ、文化の発展に大いに寄与する」という信念があったとのことで、「熱海にも世界的な美術館を建設し、日本の優れた伝統文化を世界の人々に紹介したい」と願い、このMOA美術館が開館されたとのこと。

エントランスから美術館本館までは約60mの高低差があり、その間を総延長200mにおよぶ7基のエスカレーターで繋ぐ。エスカレーターの壁面や天井は照明が刻々と変化し、色彩のグラデーションを楽しむことができる。

この仕掛けが素晴らしく、神社の参道が如く少しずつ気持ちを日常から非日常へ切り替え、美に意識を向けてくれる。

エスカレーターの途中には直径約20mの円形ホールがあり、この日は「万華鏡の作り出す一期一会の映像をリアルタイムで直接投影」ということで依田満・百合子氏の作品が展示されていた(曲・演奏:中村由利子)。

ホールには椅子が設置されていたが、美しい音楽に耳を傾けながら移り変わる色彩をいつまでも眺めていられそうだった。

エスカレーターを登りきるとヘンリー・ムーアの「王と王妃」が設置されているムア広場に出る。

立ち入り可能な芝生がとても美しく、ここで寝転がりながら一服してもとても気持ちよさそうである。

広場から望む相模灘。

開放的であり見晴らしがとても良い。この日は快晴とは行かなかったが晴れれば初島まではっきりと見渡せるだろう。

「アポロンと瞑想」(左)、「走りよる詩神たち」(右)

エミール・アントワーヌ・ブールデル(1861-1929、フランス)による1912年代の作品。

ムア広場を過ぎ、美術館本館に入る。

美術館は大きく切り取られたシンプル且つ開放的な間取りであり美術品を際立たせる。

展示されている美術品もさることながらこの建物自体が一つの美を体現しているのだ。

入り口すぐのところには黄金の茶室が展示されていた。

1586年/天正14年の正月、豊臣秀吉が時の天皇、正親町天皇に茶を献じるために、京都御所内の小御所に組立式の黄金の茶室を運びこみ、黄金の道具を用いて茶会を行ったという史実に基づき工学博士堀口捨己の監修により建築家早川正夫等が復元設計し、制作したもの。

キンキンが眩しい。流石派手好きの秀吉である。

秀吉はその後もこの茶室を大阪城内や北野天満宮などに持ち込んでは茶会を催したことが様々な大名や茶人の日記や茶会記に記されているが、この黄金の茶室は大阪夏の陣の際に焼失したとされている。

MOA美術館の全ての美術品を紹介することはできないが、その中でいくつか心に残った物を紹介させて頂く。

竹林七賢人図屏風

久隅守景、江戸時代、17世紀の作品

竹林七賢は、中国晋時代の乱世、俗塵を避け、竹林の中に遊び、放談荒飲した7人の隠士のことである。

今風に言えば飲んだくれの引きこもりということになるが、時代が違えばなんとやらである。

どの時代にも現世に絶望し、一人の世界に籠る賢人はいるものである。

大江山物語

菱川師宣、江戸時代、1681-88年頃

大江山物語とは、大江山に住む鬼の棟領を源頼光などが退治するという内容である。

一説によれば昔の人が思う鬼は即ち「病」であり、故に酒(アルコール)を飲ませ退治するとのこと。

菱川師宣は木版技術により浮世絵版画の1枚刷りを試み、江戸の風俗や庶民に愛される物語などを描いた。

阿弥陀如来及両脇侍坐像

木造漆箔、平安時代、12世紀、重要文化財

阿弥陀如来は西方極楽浄土の主尊で、観音菩薩、勢至菩薩を脇侍とし、死者を来迎するという。

光背には奏楽し、歌い舞う音声菩薩を彫り出し、極楽浄土の様相を表しているとのこと。

加彩騎馬人物俑

中国、前漢時代、前2-1世紀

中国漢時代には、墓室を死者の生活空間とみなし、人物や動物、生活用具、家や楼閣などの模型を墓に納める風習があった。このような人物像等を俑と呼ぶ。

西安にある秦の始皇帝の兵馬俑もこの類である。

色彩がよく残るこの俑は前漢時代の芸術の一端を窺うことが出来る。

最後に出口近くには「創立者岡田茂吉の部屋」と称して創立者の生い立ちやこの美術館にかける想い等が紹介されていた。

箱根美術館の創立者であり、MOA美術館の基礎をも築いた岡田茂吉氏は前半生を実業家として、そして後半生を宗教家として、明治、大正、昭和期にかけ活躍したとのこと。

幼年期から骨董や絵画に深い関心を寄せ、日本画家を志し、東京美術学校に入学するも、病気により絵画修行を断念。その後、婦人装身具の意匠考案と販売事業で成功し財を成したとのこと。

一方、そのころ身内の不幸に関東大震災や世界恐慌などが重なり、事業も傾く中、哲学、思想、宗教の研究に没頭し、優れた美術品は人間の本質に強く働きかけ、健全な社会を形成するという考えに至ったとのこと。

そうした氏の想いがあり今このような素晴らしい美術体験が出来ていることを心から感謝したい。                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                

四季折々の花とハーブが楽しめるACAO FOREST

午後にあり、雨が降ってきたが、本日もう一つの目玉であるACAO FORESTに行ってみる。

熱海の海を見下ろす小高い丘陵地に、一面バラやハーブの庭園が広がるACAO FORESTは今一番熱海で「映える」場所として人気を集めている。

熱海駅からバスで15分と若干アクセスが悪い場所にあるが、行く価値は十分にありそうだ。

園内の有名どころと言えばやはり、2017年にオープンした「COEDA HOUSE(コエダ ハウス)」。

設計は、新国立競技場も設計した建築家の隈研吾氏。

“小さな枝を組み合わせて大きな木のような建築を作りたい”という思想の元、外装にはガラスを用い、鏡でつくられた家具とともにローズガーデンに溶け込むようなデザインとしている。

また、COEDA HOUSE は「集める」という意味を持つ“CO”と小さな枝(EDA)が集まって大きな木を表現しており、“COEDA” には「木の下に人々が集う」という意味も込められているとのこと。

建物は360度全面ガラス張りの真四角の平屋建てで、簡潔なモダンな中にも暖かい和のテイストを感じさせる。

中央に積み木のように組み上げられた柱は樹齢約800年のアラスカヒノキを80cm~12mの角材にして、49層1,500本も積み重ねられている。

床に使用しているのはアフリカケヤキ。

切り出した木をそのままの無垢材を使っているため、木のぬくもりや、香りが直接伝わってくるのが特徴。

熱海特産の橙を使用したベイクドチーズケーキ。COEDA HOUSEの柱がモチーフとなっている。

自身が感じるに国内随一のオシャレカフェであり、ドリンクもフードも普通にハイレベルなのでぜひおススメしたい場所だ。

お土産コーナーのクオリティもとても高く、熱海のお土産もここで調達しておきたい。

今日はあいにくの天気となったが、雨に濡れるACAO FORESTも美しい。

何気なくレンガに刻まれる文字の来歴を考えるだけでイマジネーションが広がって楽しいものである。

ACAO FORESTは自然の地形を生かした段々畑状に12種類のテーマ別のガーデンが点在しており、代名詞になっているバラだけでも全部で約600種4,000株も植えられている。

庭園は英国調を連想させる作りとなっており、ところどころ背景として物語性を際立たせる建物等もとても可愛くファンタジーな雰囲気を醸し出す。

植物園的な種類別のディスプレイではなく、テーマに沿って最も美しいと感じる展示のされ方がなされている点がポイント。

行った時はハロウィン前だったので、秋らしいパンプキンの展示も。

旅の終わりに

以上で今回の久々の熱海旅企画は終了である。

旅の途中、調子に乗って一眼のシャッターを切りすぎたせいで写真が大量にあり、それぞれに確り整理する必要があった為、3部作にわたる長編になってしまった。

今回行った場所は来宮神社、駅前平和通商店街、伊豆山神社、サンビーチ、MOA美術館にACAO FORESTと盛りだくさんであり、その中で新しい発見がいくつもあった。

例えば上記でサンビーチ以外は意外にも全て初見である。

熱海は少なくとも10回は行ってると思うが、いつも温泉に浸かった後はサンビーチを眺め、金色夜叉に想いを馳せて終了みたいな旅をしていた。

そんなのんびりと雑な旅もまた悪くないが、行ったことがある場所でも視点を変えればまだ見ぬ魅力があることを感じた旅路であった。

コロナも徐々に落ち着き、少しずつではあるが、外に出れるような雰囲気にもようやくなってきたので、当ブログの本懐である未知の場所への探求企画も今後もどんどん充実させていきたい。

願わくば来年は海外企画!

望め、さらば与えられん。

では、また!

この記事を書いた人

クリス

クリス

こんにちは!山屋のクリスです!海外登山メインで目標はエベレスト登頂です。ラグドールの鈴鈴先生と一緒に暮らしてます。登山や旅行、日常ネタを中心にブログをアップしていきますので宜しくお願い致します!

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