始まりの登山
今回はちょっと時間を遡って過去の話です。初めての登山。言うならエピソード1のお話です。
ことの始まりは2019年8月、猛烈に「エベレストに登らなければいけない」と言う使命感に駆られました。山に突然呼ばれるとはこのことか。
その時、ちょうど会社でリーダーシップ研修なる物が開催されており、1996年のエベレスト大量遭難事故を題材にそこから学びを得ると言う物でした。
そこで初めてエベレスト登頂がどのようなものか触れたのですが、登頂という目標を達成する為の壮絶な決意と努力、各人の熱い想い、極限で顕になる生々しい人間性に強く惹かれました。
また、「世界の頂点に立つ」というのが単純にカッコ良かったです。
自分も一度エベレスト、即ち世界の頂点に立ってみたい。エベレスト登頂という大きなる目標を達成した人生はきっと相当カッコ良く、その後の人生でも自分を「良くやった」と尊敬しながら生きてける等と考えだすともう止まらず、気がついたらアリババでザックを買ってました。
人生で初めて買ったザックはザック界のロールスロイス!こと背負い心地に定評のあるグレゴリー社のZULU40。
人生を振り返ってみると、それまで富士山を登ったり、高尾山に登ったり、伏見稲荷大社がある稲荷山を登ったりしたことはありました。しかし、これらは何も「親主導で着いていった」、「友達と遊びに行った」、「観光のついでにちょっと行った」等であり、自分が明確な意思を以って山に挑む「登山(Mountaineering)」をしたことはありませんでした。
エベレストの道も一歩から。エベレストを目指す為にも少しでも高い山へ!善は急げ!ということで登山超ど素人は北京市最高峰霊山2303mに挑むことにしました。
ド素人、霊山登山口に立つ
2019年9月9日、北京市内から車で揺られること2時間、人生初めての本格登山!霊山登山口に辿り着きました。
標高1300m地点に位置する登山口はどこが入り口かも分からないようなもので、日本で一般的にあるソレと比べると驚く程ボロボロでした。
しかし、観光地化されていない雰囲気は逆に本格登山に挑戦する為に来た自分にとってはテンションが上がりました。
9:30、夢と希望と頭一杯に詰め込んだネットの知識と共にいよいよ登山開始です!
登山口に人影はなく、心細かったですが、「絶対登頂!そして絶対生きて帰ってやる!」と気合を入れました。
目指すは登頂、山頂1泊、ルートはピストンの山行!初登山時の大まかな装備は以下の通りです。
- ザック ZULU 40
- テント Naturehike Cloud 3
- シュラフ Naturehike 限界性能−5度
- トレッキングポール Naturehikeカーボン
- シェル ユニクロ ブロックテックパーカー
- パンツ ユニクロ ゴルフパンツ
- 水 8L
- 食料 3日分
- カメラ パナソニック GH4
初登山なのに何故か「山頂でテント泊もしたい!」等と思いつきテント装備。遭難したら大変と無駄に水8L+食料、シュラフで装備重量は圧巻の18kg!
重たく肩に食い込むザックに「これぞ本格登山!」一人テンションが上がってました。微笑ましい程のバカです。
装備類で特筆すべきは、「簡単な低山なら問題ない」とネットで紹介されていたユニクロのソフトシェル(のようなもの)とゴルフパンツ。
初心者だし、GORE-TEXは高すぎるだし、最悪普段着でも着れるということでチョイスしましたが、大失敗でした。。。
登山は想像以上に汗だくになります。ユニクロの上下は透湿性が微妙なので、汗が蒸れまくって地獄です。というか、そもそも登山用じゃない為、ユニクロ製品の性能が悪い訳ではありませんが、皆さんも登山で使うのはやめときましょう。
装備の重さはありますが、登山自体は快調、天候もビギナーズラックで天気は快晴!
霊山は登山口以降、基本的に高い木が生えていないので開けた稜線を歩く最高の山行となります。
登山開始後最初は階段歩きがメインです。
テンションが上がって思わずターミネーターのポーズ!
初登山、装備の重さに萎える
階段の道が終わると開けたコルに出ます。ここからは道なき道を行く感じです。
ただ、危険な岩場やテンションが下がる泥濘等も無く非常に歩きやすいです。
これは岩場に登ってポーズ取ってるだけで実際はこの岩場に登る必要はありません(笑
初登山+18kgの荷物でコルすぎたあたりで大分バテてます。
ここまでで約3時間かかり、道のりとしては半分ほどです。
コルを抜けると再度登り坂に。このあたりからもう一度階段が登場します。この階段は若干新しく、木製でした。
霊山の登山道は最初から最後まで巻道無くほぼ一直線に頂上を目指すルートで基本的に迷いようがありません。
しかし、日本国内の登山と違い、海外登山は登山届等ありません。地図も売ってません。なので道に迷ったり、遭難したりすると完全にアウトです。更にいうと中国は遭難しても低空空路が基本的に軍用となってるのでヘリを飛びません。ココヘリがある日本とは大違いです。海外の登山事情は日本国内と大分違うので皆様も良く調べて挑まれる方がいいと思います。
尚、頂上付近には放牧の牛さんが草を食べにきてました!可愛いです!
最後の坂道、ここを過ぎればもう頂上です!
牛さんが可愛すぎてニヤニヤしてしまいます(笑
霊山山頂に立つ
2019年9月9日14:00
中華人民共和国北京市最高峰霊山2303m登頂成功。
獲得標高差約1,000m、なんだかんだ休憩入れて6時間半かかってしまいましたが、何とか登頂できました!
山頂に到着してようやく昼食です!
これまたネットで聞きかじった情報で山頂はカップ麺が旨いということで、日本から持ってきた京都ラーメンをサーモスボトルのお湯で作りました!奥に見えてる赤い箱は現地で買った水で加熱するお弁当です。
山頂のタルチョーが風に揺れています。
ここまで荷物は重いは、汗は蒸れるは、体力は使い果たすはで大変でしたが充実した疲労と共に満足感がこみ上げてきました。
初めての登山、しかも海外登山、テント装備を背負ってやり遂げました。「やったったー!」と心から思えた瞬間でした。
今日は登りだけで終わりなので幕営しました。テント泊の登山パーティーは自分以外2組しかおらず、山頂を独占状態。
こんな素晴らしいロケーションでテント泊出来るなんて最高の初登山でした!
ここから私の全ての登山は始まりました。おっかなびっくりで反省点だらけの初登山でしたが、今後どんな山を登っていてもこの日、この感動を忘れることはないでしょう。
行きたくなければ行けばいい、自由で美しすぎるこの世界に。
燕山山脈の山々。美しい!
結びに
昨今中国では猛烈な経済発展を背景に登山・アウトドアブームを迎えており、初心者登山客でも登りやすいようにコンクリート製階段の整備、登山道への売店やゴミ箱の設置、より観光ムードを高める為に休憩所等の人工物を設置し、商業化が進んでいます。
なんでも自分でやってしまい、ゴミを落とさない代わりにお金も落とさない少数の登山家VS少々行儀は悪くとも登山にいろいろ商業的なサポートが必要でお金を落とす大多数の登山客では資本主義的に考えると勝負は明らかです。
このような商業化の波は2000m級の低山で顕著であり、霊山も例外ではありません。
程よく登りやすく、景色もとても綺麗で気に入ってた霊山ですが、同年11月中旬に再訪した時には既に山肌が重機で削られており、噴水(意味不明)や休憩所の建設が始まっており、あの可愛い牛達もいませんでした。
勿論、人様の山を登らせて頂いている身で文句は言えないですが、ちょっぴり残念な気にもなります。
「国破れて、山河在り」という杜甫の詩もありますが(中国なだけに!)、自然風景というのは文明が移ろいでも美しいありのままの姿を保って欲しいものです。
どこかの土地を誰かの物と人間が勝手に言い出す遥か前から山はずっとそこに在ったのですから。
残念だなと思う一方で、やはり登山は一期一会なんだなと再認識させられました。
美しい思い出は頭とSDカードの中へ。一瞬一瞬大切にして行きましょう!
それでは、また!